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『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』について

2018年10月27日 00:00

とても長かった映画が、ようやく完成し公開までこぎつけました。
今日は、ネタバレにならない程度に今の気持ちを綴りたいと思います。
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■はじめに
前作映画プリキュアドリームスターズ!では、初めての長編という事であの当時できる限界まで全力で取り組みました。
しかし、アニメの制作現場というのは想像以上に色々な事情で思うように行かない事がたくさんあります。
初長編を終えると同時に、作品のクオリティについては高い評価を頂けつつも、自分の錬度の低さででもっと良くできたかもしれないところも突き抜けられなかった事。コアなファンの期待に答えきれなかったかもしれない事。
全て監督としての自分が未熟な事が原因だと、後悔に後悔を重ねていました。

そんな風に、お世辞にも完璧とは言えないスタートを踏み出した私に、プリキュアの生みの親である鷲尾さんがもう一度チャンスを与えてくれました。しかも、シリーズ15周年記念映画という大作です。
うれしいと思う気持ちと併せて、本当に私でいいのだろうか。もっとすごい作品を作れる大先輩がプリキュアにはたくさんいるのに・・・という葛藤がありました。
ただし、それ以上に私を育ててくれたプリキュアという作品に対する感謝の気持ち。やるからには、次こそ絶対に後悔したくないという気持ちが強く私の背中を押しました。

■偉大すぎる先輩たち
私がプリキュアシリーズに仕事で携わり始めたのは2010年からですが、プリキュアシリーズに関わる監督、プロデューサを含むスタッフの人たち、キャストの人たちは想像の100倍くらい作品に対して真摯に向き合っていました。
「子供向けだからこのくらいでいいでしょ」等と考えている人は誰一人いない
子供に向けるからこそ、本当に感じられ、その時その時にできる最高の回答を子供たちに届けようと人生をかけて作品に向き合っている人たちばかりです。
TVの企画や脚本の会議に何度も参加させてもらいましたが、大の大人が子供のように顔を真っ赤にしてプレゼンや議論する場を何度も見てきました。
そのような事が15年間途切れずに、たくさんの天才・秀才達によって続けられてきました

そういう人たちが血を流す努力でつないできたバトンを、私のような未熟な新人監督。しかもCGの人間がキャッチするという事。軽いわけがありません

■この映画にかける思い
そんなこんなで、私にとっては相当な重圧だった本作。
万力で弱い力を両側からじりじり締め付けられているような感覚がずっとあり、それは日に日に強くなっていきました。

私は立場上、かけもちで作品を打診されることもあります。しかし、生半可な覚悟でこの作品に向き合いたくない。上司にかけあって、この映画が終わるまでは集中させて欲しいと無理を言い、一本に絞ってもらえました。
経験の浅い私がこの作品を見合うものにするために、できる事は全てやりました。

必死で戦う先輩たちの背中を見てきて、私も覚悟を決めなければと奮い立てたのです。

しかし、その無茶に最後まで付き合ってくれたスタッフ達の尋常ではない努力のほうが、私の何倍もこの映画を押し上げてくれました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

■実は泣かせるつもりが無かった制作陣
ここのところ、この映画の感想で「泣けた」というお話をよくいただきます。
スタッフ試写の後も、泣いたと言ってくれたスタッフがたくさんいました。
実は、脚本や絵コンテをみんなで作っている時、メインスタッフ陣は「泣かせてやろう」という気持ちは一切ありませんでした
ただただ、はなちゃんの心の流れだけは丁寧に拾っていこう。そんな気持ちで脚本を作っていきました。
なので、上のような感想をいただくたび頭の上にハテナが浮かびました。
お話という面で一般のお客さん達が涙してくれたのだとすると、はなちゃんの心に最後まで向き合って、ありきたりな言葉や流れに逃げなかった香村さんの苦しみが届いたのかなと思います。

■さいごに
なんだか上手くまとまりそうにないのでそろそろ〆ようと思います。
今回の映画、信じられないくらい大勢のスタッフと、たくさんの時間をかけて丁寧に作られています。
しかし、それと同じくらい15年間バトンをつないでくれた先輩たちの汗が、ストーリーの核になっています。

みんなはどのプリキュアが好きですか?
一人に絞らなくてもいいです。テレビの前で夢中になって応援していた大好きなプリキュアたちを、映画館でたくさんたくさん応援して下さい。
そして、大切な思い出がもっと大切になる。この映画がそんなきっかけになれば、最高に幸せです。
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プリキュアに叶えてもらった夢

2015年10月25日 21:55

(※「ながいよ!」という方は、スクロールして「子供たちの笑顔が~」から下だけでも読んでいただければと)


ついに10月31日公開になります
「映画Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!」
あちこちでセミナーや取材・告知をさせていただき、感謝しております。

イラスト描いてみまいた(クリックで拡大)
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この中で、フル3DCGによる中編映画
「プリキュアとレフィのワンダーナイト!」
で、映画としては初の監督をやらせていただきました。
半年という短いプロダクション期間でフルCG映画を作るという無謀な挑戦でしたが、なんとか先日ダビング、オンラインを経て納品となりました。

今までもたくさんのプリキュア作品に関わらせていただいてきましたが、今回は初監督ということもあり自分にとって並々ならない気合と執念で作品制作に望みました。
なんだか自伝のようになってしまいちょっと長いですが、自分がプリキュアというタイトルに込める思いを書いていければと思います。


■「監督になりたい!」と決意した「ホッタラケの島」
私のキャリアスタートはゲーム会社で、当時「一流のモデラーになる」事が唯一の目標であり、夢でした。
しかし、最初の転職先であるプロダクションIGで関わった映画「ホッタラケの島」で、当時絵コンテ演出をされていた塩谷直義さんの仕事をみて「キャラクタを魅力的に見せるのはモデリングだけじゃない」という当たり前の事に気付きました。
キャラクタのしぐさやセリフ、場面の流れなどあらゆる要素が総合的に絡み合い、キャラクタは魅力的に見えるのだと。
それ以来私は6年間「監督になりたい!」と言い続けるようになりました。


■東映に来るきっかけとなった「プリキュアオールスターズDX2」
そもそも私は東映アニメーションに所属前、別の仕事をしながら在宅で東映の仕事を手伝っていました。
その時手伝っていたのが大塚隆史さん監督の「映画 プリキュアオールスターズDX2」で、宮原直樹さんがディレクターをされていたフル3DCGエンディングのキャラモデリングを手伝わせてもらっていました。
私の担当はプリキュア5GOGOの「キュアレモネード」だったのですが、リアル系のCGしか経験のない私はOKすらとることができず引き上げられてしまう始末。迷惑だけかけて全く戦力にならないというありさまでした。
ただ、引き上げられたにも関わらず試写会で見たキャラクタたちの映像をみて「もう一度この仕事をしたい」と思えるくらいインパクトのあるエンディングに仕上がっていました。

ちょうどその頃別の仕事が止まる事が決まり、現在は東映デジタル部の部長になっている氷見さんに声をかけてもらいました。
私としては結果を出せなかった後ろめたさがあったのですが、それでも「才能を感じるから」と声をかけてくれた事に感激し、デジタル部に直接所属する事を決めました。


■リベンジで挑んだ「スイートプリキュア」
それから5年半、色々な作品に関わってきたのですが、転機となったのは2011年「スイートプリキュア」の後期エンディング。4人目の新キャラクタ「ミューズ」のモデリング担当が空いているが、やってみるかと提案をもらいました。
DX2での挫折がくやしくて、いわゆる「セルルック」のキャラクタ表現に対して徹底的に自主勉をしていた私は「やらせてください!」と即答。今回は引き上げられず最後までOKを取る事ができました。


■人生初の成功体験「スマイルプリキュア」
スイートで一応はトゥーン系案件でも使えると評価してもらい、次のスマイルプリキュアではリードモデラーをやってみろというお話をいただくことに。
話を聞くと、スマイルの監督は私が東映に来るきっかけを作ってくれたDX2の大塚さん。上がってきたキャラクタデザインはとても好みで、
とにかく「この作品に運命を感じる」と思いました。
それもあり猛烈な熱意で直談判をし、リードモデラーではなくエンディングのディレクターとしてやらせてもらえることになりました。
そうと決まればがんばりましたよ、そりゃもうがむしゃらに。
結果的にスマイルプリキュアのEDはとても好評をいただき、プリキュア初のCGWORLD表紙をやらせてもらうなど大成功を収めることができました。
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■逃げては通れぬ戦い「聖闘士星矢 Legend of Sanctuary 」
スイートやスマイルをやりながらもずっと取り組み続けていたビックプロジェクト星矢がついに始動し、しばらくはこれにかかりきりになっていました。
この案件ではキャラクタデザインという肩書きを頂くことができました。
正直、長い案件だっただけに辛い思い出がそれなりにあります。
とにかく、苦しかった。(忙しかったとは別)


■リハビリだと思ったら超絶大変だった「ハピネスチャージプリキュア!」
星矢のデザイン、モデリングが終ったタイミングでしばらくゆっくりしたいなあ・・・と思っていたら、上司から呼び出されました
「3つの中から好きな案件選んでいいからディレクターして」
というお話。
今思えばこれ以外選ばないだろと思うラインナップだった気がしないでもないですが、とにかく私が選んだのは「ハピネスチャージプリキュア!」でした。エンディングは一回やっているし、まあ肩の力を抜いて息抜きがてら楽しもうくらいに思って引き受けました。
世の中そんなに甘くない!
ハピネスチャージの前期をやっている時期は、星矢のショット制作まっさかりの時期。
コンポジターもエフェクターも協力を得られず、あらゆる作業をセルフサービスでこなす超絶過酷な案件に。
でも、不思議と苦しくは無かった。むしろむちゃくちゃ楽しかったのを覚えています。
その後フォームチェンジバンクを数本作りながらクオリティの土台を固めて、グランドラインへ旅立つことに。


■東映を辞めようか本気で悩んでいた時期
実はワンピースが本格始動する前、東映を退社しようか本気で悩んでいました。
正直ここまでの数年間で精神的に疲弊することがあまりにも多く、ハピネスが楽しかったので少し持ち直したものの気持ちの落ち込みは治っていませんでした。
この時期、自分は監督になれてもショートムービー止まり。テレビや映画で監督なんてどうせなれないだろうと思ってしまっていました。
そんな時、スイートプリキュアの境監督と星矢の上村助監督が飲みに誘ってくださいました。
お二人は監督を目指す私からすると憧れの中の憧れ。
そこでお二人がが出会ってきたレジェンドな方々の話や、やりがいのあった仕事の話。
たくさんの話を聞かせてもらいました。
そこで何より嬉しかったのは「宮本君の監督した作品を見てみたい」と二人に言ってもらえたこと。
とにかく、体がぞわっとするくらいうれしかったのを覚えています。


■初監督「東京ワンピースタワー」
実は今の映画を監督する前に、一本だけショートムービーの監督をやらせてもらいました。
現在東京タワーの下でやっているワンピース専属のテーマパーク「東京ワンピースタワー」の映像です。
「ルフィのエンドレスアドベンチャー」というアトラクションの最後にあるシアターに流れている映像が私の初監督作品です。
ここでも、キックオフ時にある憧れの方からうれしい言葉をいただき、一気に気持ちがトップギアに入りました。
前からワンピースはやってみたかったこともあり、その当時できることは全てやりつくし今でもクオリティには自信を持ってオススメできると自負しています。
ご興味の有る方は是非東京タワーへ。


■ついに映画監督「プリキュアとレフィのワンダーナイト!」
ここ数年間の人生で最も気持ちの落ち込む時期を乗り越え、ようやく手にしたチャンスが今回の映画。
私を東映に呼んでくれた氷見さんから「ハロウィンモノやりたいって言ってたよね、今年はハロウィンがテーマだから企画出してみる?」と進められました。
「ここを逃したら次のチャンスは無い!」と思い、必死に食らいついて企画を前に進められるよう頑張りました。

中編とはいえ半年でフルCG映画を作るというクレイジーなスケジュール。
正直最後の最後まで本当に終るのかと不安でした。

今回は監督のほかに、キャラクタデザイン、絵コンテ、リードモデラー、フェイシャルリギング、アニメーションなどを兼任しました。
自分に出来る事はなんでもやるぜ!というスタンス。
メインスタッフには今までずっと一緒に組んできた信頼できる布陣で固めてもらい、彼らと一枚岩になり結束できなければこの期間で完成はありえなかったと思います。
とにかく必死に力を尽くしてくれたスタッフたちにはもう足を向けて寝れません。

実は制作中盤、同時作業していたテレビの後期EDの佳境時期くらいからずっと頭痛が治まりませんでした。
症状を調べてみたら「緊張性頭痛」というものらしく、緊張やストレス、肩こりから来るものだとか。
結局映画が終るまで強弱はともかく、ずっとついてまわっていました。
ただ、オンラインで全素材を納品した日の夜信じられないくらいぐっすり眠れて、次の日起きたら完全に頭痛が治っていました。
私は昔から緊張はしないタチだと思っていたのですが、今回ばかりは不安でどうしようもなくなっていたのかもしれません。


■子供たちの笑顔が、一番のご褒美
そして昨日10月24日、私にとって晴れ舞台となる東京国際映画祭のレッドカーペットイベント・新宿バルト9の舞台挨拶をしてきました。
これらは自分にとっては身に余るもので、完全に身の丈にあっていないレベルのイベント。
プリキュアというビックタイトルにぶら下がり「連れて来てもらった」イベントです。
いつか自分の実力が、この舞台に相応しいレベルに到達できる日が来るんだろうか・・・
そんな事を思いながらフローラさんときゃっきゃしてきました。
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そして今日10月25日。ついに子供たちの反応を見る日がやってきました。
試写会で後ろの方に座り、隣に座った長編の座古監督と二人で子供たちの反応を見ることに。
もうね、本当に一生懸命、プリキュアたちを応援してくれるんです。
一生懸命ライトを振って「プリキュア、頑張れ!プリキュア、頑張れ!」って。

本編もさることながらその姿を見て感動し、気が付いたら涙を流していました。
4年前始めて子供たちの反応を見たときから確信していたこの思い。
「子供たちにとって、プリキュアは架空の存在じゃない」
実在のヒーローだからこそ、そこに適当な事はできない。
改めて、自分の仕事の大切さを実感しました。
そして、うれしかった。
心の底からうれしかった。
子供たちのために映画を作ってきたはずなのに、何で俺が一番うれしさをもらってるんだって、もう胸がいっぱいになりました。


■「レフィ」というキャラクタについて
最後に、映画について触れようと思います。
ネタバレにならない程度に、映画オリジナルキャラクタ「レフィ」についてお話します。
ここまで、私が映画監督になるまでのお話をしてきました。その中で

・監督になりたいが、そう簡単ではなかったこと
・何度も挫折し、心が折れ、諦めてしまったこと
・それでも他人の言葉や熱意に心を打たれ、もう一度頑張ろうと思えたこと


プロットを書いている時は全く意識していませんでしたが、レフィというキャラクタは私が「監督」になるまでに経験してきたこと、出会ってきた人たちの生き写しだなという事に気付きました。
劇中でレフィが言うセリフ、プリキュア達に言ってもらったセリフ。
それら全てに、自分がもう一度頑張ろうと思えた大切な人たちとの関わりが散りばめられています。


人間、一度あきらめた事を何かのきっかけでもう一度挑戦し、達成したとき本当に心に勇気が湧くんです。
私は私が出会ってきたたくさんの人たちのおかげで、もう一度頑張ろうと思えました。
この映画を見た子供たちが、本当に小さなことでもいいんです。
「レフィみたいにもう一度頑張ろう」
そう思ってくれたら、これから先生きていく人生の中で、それが勇気になり柱となると思うからです。

カナタ王子の言葉で夢を捨てずにいられた、プリンセスはるかのように。

MADMAX4

2015年08月31日 00:25

マッドマックス、ようやく見れました。

アドレナリン終始出っ放しの、最高のヒャッハー映画でした。
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言っていいといわれたので少しだけ昔話を。
IGを辞めてから東映に来るまでの空白の10ヶ月、実はマッドマックスの関連作品に取り組んでいました。
5年前シドニーに出張に行っていたのも、実はジョージミラー監督と打ち合わせに行くというものでした。
詳しく内容は話せませんが、その案件が途中で立ち消えに。
集めていた日本人メンバーも解散となりました。

本当に仕事に燃えまくっている時期に取り組んでいた仕事なだけにその挫折っぷりはハンパではなく、映画に関わっても不幸にしかならないとまで感じていました。
(実はその時期取り組んでいたもう一本の別の映画も、ほぼ同時期に打ち切りに)

ただ、その仕事の中心人物である前田真宏さんのイメージボードやアイデアがたくさん採用され、エンドロールに大きく名前が刻まれているのを見て、心からうれしかった。
自分は
「一枚の絵が、ばらばらな方向を向いている人間を同じ方向に向かせる力がある」
という持論を持っています。
これは前田さんとこの仕事をしている時に感じた事でした。

自分は今ディレクターという立場で仕事をさせてもらっていますが、前田真宏さんやジョージミラーという「圧倒的高み」のディレクターと20代前半に仕事が出来たこと、本当に良い経験だったと思います。
いくら自分が作った作品を褒められても、認められても、圧倒的高みにいる存在を知っているからこそ自分の非力さを忘れずにいられる。

そんな自分が初めて映画を監督し、そして一番苦しんでいる時期にこの映画を見られた事は、何かの縁なのかもしれません。
本物の天才たちに比べて自分の考えたお話や演出なんて、とても稚拙で次元の低いものかもしれない。

でも、今やっている映画を1800円の価値がある映画にしたいし、絶対にするつもりでいます。
なぜなら、今自分の元には本当に信頼できる仲間が集ってくれているから。
私だけではダメでも、このメンバーならきっと面白い映画を作れる。
そんな決意に震える三十路新人監督であります。

残り時間でどこまで行けるか分かりませんが、最高の映画を目指して頑張ります。

「シドニアの騎士」モデル販売のデータを見てみました

2014年11月10日 01:13

3DCGアニメシリーズ「シドニアの騎士」に使われたモデルが、有料、無料でダウンロードが可能と話題に。
シドニア堂

遅ればせながら、自分もダウンロードしてみました。

■はじめに
このモデルデータについて、SNS界隈で色々な意見が飛び交っているのを見ました。
このモデルを見ることで、学生さんやこれからトゥーン系アニメCGをやろうと思っている人がどのような視点で受け取ればいいのか。
一応、実写からトゥーンまで色々な仕事をしてきた自分としての意見も述べておこうかなと思いこの記事を投稿しました。
(※あくまでアニメ会社勤務サラリーマンの個人的感想です)

■会社によって、千差万別なモデリングの考え方
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まず、フリーで落とせた3体を読み込んでみました。
造形等については、キャラクタデザイナーの意図、視聴者の好みがありますので私見は述べない事とします。

自分はゲーム会社やアニメ会社、フリーランスとして受注していた時期など色々な仕事を経験してきましたが、モデリングに関する考え方は驚くほど多様化していると感じています。
例えばハードエッジの是非。ポリゴン数の上限。シワの作り方。どれ以上のディティールからマップに頼るかなど、ひとつの会社で通用した技術が他の会社では全否定されるなんてことはよくあります。
そういった経験の中で、シドニアを制作されているPPIさんのモデルは「バランス派」だと感じています。

たとえば、細かい手のシワや血管の浮き出具合まで全てポリゴンで割る会社もあります。
逆に、AEで平面を貼り付けたりレタッチすることが前提で、とにかくディティールを作らない会社もあります。
よく「セルルックのモデルはシェーディングで見ると奇形に見える」という話を聞きますが、それは線を出す、フォルムを取るのに必要な情報以外なるべく省いているからです。

そういう視点で見てみると、上記画像はシェーディングで見てもおかしくは見えませんし、かといって細かいディティール全てがモデリングされているわけでもありません。
そういう意味で、トゥーンレンダリングの要素を入れながらもセルアニメのトレースではなく、CGプロダクションとしての経験を投入しようと、リアル系CG作品の考え方もブレンドしながら探っていったものと思われます。

■構造面
例として、口のメッシュをソフト選択で上げてみました。
02_20141110000714c3f.jpg
筋肉の流れに沿ったメッシュによって、綺麗に変形しています。
間逆の例ですが、最近話題になっている「ギルティギア」のメイキング記事が以下にあります。
GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」で実現された「アニメにしか見えないリアルタイム3Dグラフィックス」の秘密
こちらで公開されているキャラクタのワイヤーフレームを見ると、口周りが大きく省略されているのが分かると思います。
セルルックではやわらかく変形したジオメトリの陰影を綺麗に維持する必要がなく、しかもギルティのように別ジオメトリーの法泉を転送したりというテクニックを使う場合もありますので、変形時の陰影よりもフォルムを優先してこのようなメッシュになっていると思われます
だからといってギルティの出来はよくないのか?と言われると、自分がプリレンダーで逆立ちしても出せないようなクオリティをリアルタイムでたたき出しています。感服です。

ちなみにCGWORLDさんで何度も特集していただいて画像が出ているのでいいますが、プリキュアの口元のメッシュ構造はシドニア寄りです。

他に、頬の流れについても触れてみます。
ピンク色の線で示したのは、キャラクタを正面から見た時に頬の輪郭となるラインです。
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ここはセルとリアルで結構違うところの一つで、セルでは頬の輪郭の印象を角度に依存せずある程度一定に保つ必要があります。
そのため、ピンク色で示したように、あごから頬にかけてのメッシュの流れがそのまま上に流れるようなトポロジーを組む時が有ります。
しかし、筋肉の流れからするとシドニアの方が正しく、シェーディングを考えると実はシドニアの例が理想のひとつだったりします。
このあたりの考え方は造形にも影響していまして、正面から見て耳が髪の毛で隠れていないキャラクタを作る場合、頬のラインよりも耳の付け根が内側にないと正面から見た頬の線が綺麗に出ません。
(耳を別モデルにするなどして対応もできますが)
そのため、どうしても2Dで作画設定があるキャラクタを3Dに起す場合、「箱系」と言われる、面を張り合わせたような四角い頭のモデルになることが多いです。
シドニアの場合、3Dシリーズに向けて新規に設定を起しているはずですので、そのあたりも考慮してキャラクタデザインが組まれていると考えられます。
実際、頬ラインの造形の考え方はセミリアルなキャラクタの考え方に近く、頬から耳にかけての陰影もなめらかにつながっています。
上手いなと思ったのは、そのような造形・メッシュ構造であるにも関わらず、正面から見た時に耳に向けての造形がトゥーンと相性の良い感じにまとまっているところです。

■プロダクションにおける「良いデータ」とは?
ここまでの記事で、簡単にですがセルとリアルで色々な考え方が違ってくるというお話をしてきました。
そのため、会社の文化によって否定的な意見が出るのはトゥーンである以上仕方が無いのかなと思います。

では、このデータから何を学べばいいのか。このデータがプロダクションとしてどのように優れいているのか。
このあたりを自分の意見で話していこうと思います。

・メッシュラインの統一化
ヒロイン二人のメッシュを並べてみました。
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この二人が顔の造形が近いというのもありますが、メッシュの構造が完全に一致しています。
データを見た方は分かると思いますが、UVも完全に同じものになっています。

・類似データの共通化
05.jpg
ブーツが分かりやすい例ですが、ヒロイン二人だけでなく、足先部分やソールの構造が近いものは、やはり近い構造で作られています。
これは、テレビシリーズという厳しいスケジュールの中で上手くデータを使いまわすというだけでなく、リグやアニメーション等下流の工程でも有用なポイントです。
手なども同じような構造が使いまわされています。
06_20141110004218376.jpg
例えばめんどうな指のジョイント配置。他に、手の形状が一致しているキャラクタ同士で、手のポーズの共有など後々効いてくる利益がたくさんあります。

フォトリアルなクリーチャー等では、むしろこのあたりを微妙にバラケさせることでリアリティを出してくなどの考え方もありますが、セルルック。しかもテレビシリーズという事を考えると、非常に優れたアセットマネージメントがされていると見受けられます。

「手のモデルを使いまわすなんて当然じゃないの?」と思うかもしれません。
しかし、キャラモデラーというのは自由な人間が多いので、きちんと仕様化しておかないと似たようなデータでもどんどん仕様がバラケて増えて行ったりするのです・・・

・UVについて
UVについても、基本的にほとんどのパーツが開かれており、1-1エリアに格納されています。
(一部例外もあるようですが)
09.jpg
これもとても大事なポイントです。
mayaはメッシュの表面情報を取得する際、UV座標をベースにすることがしばしばあります。
例えば、hairに使われているfollicleも、outMeshの情報とUVの座標を元にメッシュ表面のワールド座標を割り出しています。(うろおぼえですが)
他に、ペイントエフェクトでのブラシペイントなども、基本的には1-1エリアを出た時点で無効化されてしまいます。
(今のバージョンでは直ってるのかな?)
xGenなど最新の技術ではアトリビュートマップがptexベースになったりしてこのあたりの制限は大分少なくなっていますが、色々な面から考えて1-1エリアに納められるものはなるべく収めたほうが良いというのが経験上言えることです。


■(オマケ)mayaのpfxToonの問題点
3dsMaxを使われている会社などは、デファクトスタンダードになりつつある「ペンシル」を使っている会社が多いと思われ、mayaのToonはダメだと噂は聞いていても「何がダメなの?」と分かり辛い部分もあるかと。
せっかくなので、こちらのモデルを題材にmayaToonの悩みについて少し触れておこうと思います。
おそらくPPIさんはmayaを使いつつもmayaのpfxToonなど使っていないと思われ、上手く解決していることでしょう・・・汗

まず、ヒロインのモデルにpfxToonをアサインしてみました。
このくらいの太さなら、まだ見れます。
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線を少し太くしてみます。
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ここまで太くするかは置いておいて、まず緑色の囲いを見てみてください。
mayaのToonはメッシュです。そのため、太くすると服の下にあるジオメトリーの線が上に突き出してきます!!
他に、青で囲ったところのようにディティールのあるエリアはダマになりまくってぐっちゃぐちゃになります。

こうなった場合どうするかというと、自分の場合はAEで手マスクを切って1フレームごとに消してきます。
ええ、もう気が狂いそうですよ。

他にも色々とmayaToonの問題点は存在していて、正直自分は、インハウスでラインの開発をするか、ラインだけでもキャッシュで持っていってmaxでレンダリングしたいと思っています。

映像を見ている限りシドニアではそのようなガバガバなエラーは見受けられず、上手く処理しているものと思われます。


■さいごに
トゥーンとリアルは文化が違います。
会社によっても文化が違います。
もうこれは一種の宗教のようなものです。

繰り返しになりますが、特定の会社で通用した技術が転職した瞬間全否定されることはよくあります。
なので、シドニアのモデルを見て「これが正解」「これがダメ」と決め付けるのではなく、「こういうやりかたをしている会社の1例がタダで見れた」と、ありがたく享受しておけばいいのでは。と思います。

このモデルを見た学生さんは、造形やメッシュの出来不出来よりも、優れたアセットマネージメントによる「仕様がちゃんとしてるプロのデータ」を作る必要性を感じていただければと思います。

Zbrushでごりごりしただけのデータで就職しても、ここでつまずいて「使えない新人」になる例は最近多いようです。

最近のお仕事諸々

2014年05月12日 02:11

ここのところブログをめっきりさぼっていましたが、最近のお仕事を報告しておこうと思います。

■映画『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』
http://saintseiya2014.com/

もう何年関わったか分からないくらい長い間やっていた案件。

こちらでは、自分としては初となる「キャラクターデザイナー」としてデビューさせてもらえる事となりました。
今までたくさんの作品で「リードモデラー」という肩書きをいただき、2Dのデザイン画を3Dで表現するお仕事をやらせてもらってきました。
今回はそこからさらに踏み込み、2Dでデザイン画を描くところからやらせてもらえました。
今回私が担当させてもらったキャラクタは、メインのブロンズセイント5人
・星矢
・紫龍
・瞬
・氷河
・一輝

に加え、ヒロイン
・沙織
の6人をデザインさせてもらいました。
こちらのセイントたちについては、クロス(鎧)も私がデザインしています。

今回の映画でこだわっているポイントの一つが「表情」です。
表情集と表情を作る仕組みを両方担当させてもらった事で、表現を実現するためのシステムという理想の形を実現できたように思います。
これらは、今後の作品でさらに発展させていく予定です。

モデリングチームも私が仕切っていますので、ゴールド含め全キャラクタ私が監修しています。
ただ、実際に私が手を動かしてモデリングしたのは
「星矢」「沙織」「アイオリア」
の三体で、残りはうちのモデリングチームのみんなが頑張ってくれました。
プリキュアなどセル中心のキャリアが多いスタッフだった事もあり、セミリアルではありますがキャラクタ性のきちんと立ったキャラモデルがたくさん生まれたのではないかと思います。

6/21、いよいよ公開です。
劇場グッズなど、これから色々なところでメディア取材も受けていますので、よかったらそちらも見てあげてください!!

■ハピネスチャージプリキュア!
http://www.toei-anim.co.jp/tv/precure/
今年2月から放映開始しましたプリキュアの新作で、2年ぶりにCGディレクターをやらせてもらいました。
エンディング映像では演出、CGディレクション、CG作画監督。
今年から初となる「フォームチェンジバンク」では、CGディレクター、CG作画監督をやらせてもらいました。

東映史上初となるフル3DCGのバンク映像を担当させてもらい、作ヲタ名利につきるお仕事でした。

長かった星矢のモデリング仕事がほぼほぼ完了し、ふぅ~、と一息ついたときにプロデューサに呼び出され、この作品のオーダーをいただきました。
同時期に大規模案件(お察しくださいw)が動いていたこともあり相当厳しい戦いになるよ。と事前に言われていましたが、憧れの長峯監督と仕事ができるチャンス。二つ返事でお仕事を引き受けました。
実際すごくきつい状況でしたが、スタッフのみんなが良い意味での「化学反応」を連鎖させ、とても熱量のあるフィルムに仕上がったと思います。

こちらは既にいくつかのメディアで掲載していただいていますが、今後も色々な所で取材していただくことになりそうですので良かったら見てみてください!!

■仮面ライダー鎧武
http://www.tv-asahi.co.jp/gaimu/
そういえばライダーに関わるのは初めてでした。
主人公のガイムと、バロンのCGモデルをモデリングさせてもらいました。
V-rayデビュー作です。

■その他
・プリキュアエンディングムービーコレクション みんなでダンス!

プリキュアエンディングムービーコレクション ~みんなでダンス! ~ [Blu-ray]プリキュアエンディングムービーコレクション ~みんなでダンス! ~ [Blu-ray]
(2014/03/12)
キュアハート、キュアダイヤモンド 他

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こちら、ジャケットCG担当させてもらいました。
私が担当した「スマイルプリキュア!」の前期EDも収録されています!!

・プリキュア10周年公式アニバーサリーブック

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(2014/03/10)
不明

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こちらに10周年記念のコメントとイラストを掲載していただきました。

・マジンボーン
http://www.toei-anim.co.jp/tv/majinbone/
キャラモデリングのフロー開発を少しだけお手伝いさせてもらいました。





ホッタラケを終えて5年。
ようやく長かった星矢が終わり、自分の代表作を塗り替える事ができそうです。
現在進行形で色々な案件を進めていますので、また色々と報告できる日が来たらこちらに書かせてもらおうと思います。


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