FC2ブログ

東映アニメーションを退職しました

2020年05月30日 14:42

今月5月末を持って、約10年お世話になった東映アニメーションを退職する事になりました。
仕事関係だけでなく、作品を好きでいて下さった方々に向けてもご報告をしておくべきと思い、ブログを執筆させてもらいます。


- 理由
退職の理由は一つではありませんが、好きなことを突き詰めるため、先に進もうと思ったのが主な理由です。

東映アニメーションでは様々なタイトルを任せて頂き、映画からテーマパークのアトラクションなど色々な経験をさせて頂きました。
全てやりがいのある仕事でしたが、後半は大人数・大規模タイトルが続きすぎたせいか、メモリーズが終わった後はしばらくそういった規模のものから距離を置きたいなと感じるようになっていました。

私個人としても、規模の大きさやメジャーである事よりも、自分やアーティストの力を最大限生かす事。じっくり丁寧に作品制作に取り組むことに最も喜びを感じるタイプの映像作家です。
もう少し小さな尺感や規模感で、じっくり取り組める仕事に戻れないかと日々考えていました。

会社が私に期待してくれる事と、私がやりたい事の方向性がずれてきた。これが一番大きな理由でした。


- 今後
6月以降についてですが、これまでも仕事で関係のあったとある会社様と一緒にCGアニメーションのスタジオを立ち上げる事になります。
基本的にそこで力を尽くすことにはなりますが、当分は東映アニメーションさんのお仕事もお手伝いする話になっていますので、色々と技術的な面含め力になっていけたらと思います。



- 最後に
最後になりますが、東映アニメーションには感謝しかありません。
何者でもなかった私を、キャラクターデザイナーにしてくれ、CGディレクターにしてくれ、最後は映画監督にしてくれ、夢をたくさん叶えてくれました。

今後は場所さえ変わりますが、これまで通り。いやこれまで以上に面白い体験ができる作品をお届けしていけるよう、努力を続けて参ります。
スポンサーサイト



『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』について

2018年10月27日 00:00

とても長かった映画が、ようやく完成し公開までこぎつけました。
今日は、ネタバレにならない程度に今の気持ちを綴りたいと思います。
blg.jpg


■はじめに
前作映画プリキュアドリームスターズ!では、初めての長編という事であの当時できる限界まで全力で取り組みました。
しかし、アニメの制作現場というのは想像以上に色々な事情で思うように行かない事がたくさんあります。
初長編を終えると同時に、作品のクオリティについては高い評価を頂けつつも、自分の錬度の低さででもっと良くできたかもしれないところも突き抜けられなかった事。コアなファンの期待に答えきれなかったかもしれない事。
全て監督としての自分が未熟な事が原因だと、後悔に後悔を重ねていました。

そんな風に、お世辞にも完璧とは言えないスタートを踏み出した私に、プリキュアの生みの親である鷲尾さんがもう一度チャンスを与えてくれました。しかも、シリーズ15周年記念映画という大作です。
うれしいと思う気持ちと併せて、本当に私でいいのだろうか。もっとすごい作品を作れる大先輩がプリキュアにはたくさんいるのに・・・という葛藤がありました。
ただし、それ以上に私を育ててくれたプリキュアという作品に対する感謝の気持ち。やるからには、次こそ絶対に後悔したくないという気持ちが強く私の背中を押しました。

■偉大すぎる先輩たち
私がプリキュアシリーズに仕事で携わり始めたのは2010年からですが、プリキュアシリーズに関わる監督、プロデューサを含むスタッフの人たち、キャストの人たちは想像の100倍くらい作品に対して真摯に向き合っていました。
「子供向けだからこのくらいでいいでしょ」等と考えている人は誰一人いない
子供に向けるからこそ、本当に感じられ、その時その時にできる最高の回答を子供たちに届けようと人生をかけて作品に向き合っている人たちばかりです。
TVの企画や脚本の会議に何度も参加させてもらいましたが、大の大人が子供のように顔を真っ赤にしてプレゼンや議論する場を何度も見てきました。
そのような事が15年間途切れずに、たくさんの天才・秀才達によって続けられてきました

そういう人たちが血を流す努力でつないできたバトンを、私のような未熟な新人監督。しかもCGの人間がキャッチするという事。軽いわけがありません

■この映画にかける思い
そんなこんなで、私にとっては相当な重圧だった本作。
万力で弱い力を両側からじりじり締め付けられているような感覚がずっとあり、それは日に日に強くなっていきました。

私は立場上、かけもちで作品を打診されることもあります。しかし、生半可な覚悟でこの作品に向き合いたくない。上司にかけあって、この映画が終わるまでは集中させて欲しいと無理を言い、一本に絞ってもらえました。
経験の浅い私がこの作品を見合うものにするために、できる事は全てやりました。

必死で戦う先輩たちの背中を見てきて、私も覚悟を決めなければと奮い立てたのです。

しかし、その無茶に最後まで付き合ってくれたスタッフ達の尋常ではない努力のほうが、私の何倍もこの映画を押し上げてくれました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

■実は泣かせるつもりが無かった制作陣
ここのところ、この映画の感想で「泣けた」というお話をよくいただきます。
スタッフ試写の後も、泣いたと言ってくれたスタッフがたくさんいました。
実は、脚本や絵コンテをみんなで作っている時、メインスタッフ陣は「泣かせてやろう」という気持ちは一切ありませんでした
ただただ、はなちゃんの心の流れだけは丁寧に拾っていこう。そんな気持ちで脚本を作っていきました。
なので、上のような感想をいただくたび頭の上にハテナが浮かびました。
お話という面で一般のお客さん達が涙してくれたのだとすると、はなちゃんの心に最後まで向き合って、ありきたりな言葉や流れに逃げなかった香村さんの苦しみが届いたのかなと思います。

■さいごに
なんだか上手くまとまりそうにないのでそろそろ〆ようと思います。
今回の映画、信じられないくらい大勢のスタッフと、たくさんの時間をかけて丁寧に作られています。
しかし、それと同じくらい15年間バトンをつないでくれた先輩たちの汗が、ストーリーの核になっています。

みんなはどのプリキュアが好きですか?
一人に絞らなくてもいいです。テレビの前で夢中になって応援していた大好きなプリキュアたちを、映画館でたくさんたくさん応援して下さい。
そして、大切な思い出がもっと大切になる。この映画がそんなきっかけになれば、最高に幸せです。

[miRA]bipedBuilderについて

2017年05月15日 03:35

(クリックで拡大↓)
keyVisualA07.jpg

先日ポストしたmiRAについて、個別の機能をご紹介していきます。
今回は「bipedBuilder」というツールの紹介です。

miRAは独自の「miRAコマンド」というパイソンモジュールを多数備え、その組み合わせでモジュラーリギングを行います。
基本的にGUI上からのビルドが可能ですが、よく使うものについはテンプレート化を行っているというお話も以前紹介しました。
その中でもbiped(二足歩行)やfacial(表情)のコントローは本当によく使うため、短時間でセットアップが行えるよう関節位置やスキンウエイトも含め短時間でセットアップが可能なデータを用意しています。
そもそもmiRAはキャラクタ専用のリグではなく、プロップやヴィークル、背景などあらゆる要素をセットアップできるように想定してあるトータルリグシステムですが、それを使った上で特化したツールも開発可能・・・という例として見てもらえればと思います。


■デモリール
今回はタイムラプスの動画を作成しましたので、まずはこちらをご覧ください。
(※今回はあくまでプライマリリグに特化した内容です。一番時間のかかるセカンダリーは割愛していますので、ご理解のうえご覧ください)


今回はリアル向けのキャラクタとして以前作ったユーフォのキャラとは別の素体でセットアップをしましたのでケージのフィット作業を手で行っていますが、同一トポロジーや同一UVなど仕様の一致しているキャラクタ同士で移植を行う場合、さらに短い時間でのセットアップが可能となります。
フェイシャルというフレームがありますが、大体フェイシャルリグの作成も似たような手順での作業となります。

■GUI
とりあえず市販ソフトではないので地味の極みですが、こんな感じのGUIがあります。
左がsetupタブ。右がcontrolタブ。
セットアップタブでは、ケージからスケルトンの関節位置を計算させたり、必要に応じて追加のモジュールを作成できるような機能を実装しています。
コントロールタブは、コントローラの作成。補助骨の作成。標準的なウエイトや筋肉表現のドリブンキー読み込みなどをボタン一発で作成できるようにしています。
その他にはプロキシーの作成やコントローラのペアレント切り替え作成。ダイナミクスの実装など、標準からさらに踏み込んだセットアップを盛り込みたい場合もよくあるツールはこのGUIからアクセスできるようにしてあります。
01_20170515021702d0e.jpg


■関節位置の自動検出について
ベースとなるローポリのケージを読み込んでフィットさせると、そこから関節の位置を自動検出します。
これはクローゼストポイントで最至近距離の一点から計算などをしてしまうと体系の変化時に位置ずれを起こす可能性があるため、最低でも断面の2点。重要な場合4点の参考位置から関節位置を計算するように設計してあるため、かなり精度の高いポジションの取得が可能となっています。
さらにIKを作成する上で直線状に並ばなければいけない部分はこういった検出作業時大体ずれるため、そこを補完する計算も入れられるようにしてあります。
その上で気に入らなければさらに手動で位置や軸変更を入れられるようにしてありますが、少なくともテストで作成した2体のキャラクタについては自動検出一発で骨位置を決定しています。


■(オマケ)今回作ったキャラクタモデルについて
今回はゼロからセットアップをするというテーマを満たすため、新たにキャラクタをモデリングしました。
うつ星やつらのラムちゃんで、高橋先生へのファンアートとして。。。

(クリックで拡大)
rumTyan.jpg

前回は線ありのルックだったため、今回はデフォルメしつつもリアル寄りの質感で作成しています。


■最後に
「リグってなんだか難しそう」
CGをやっていて、そう考えている人は多いと思います。
そう考えているモデラーが「自分で骨を入れてみたい」とか、アニメータが「自分でギミックを作ってみたい」とか、そういう風にカジュアルにリグに向き合える日が来るといいなと思いながらこの記事を投稿します。

[miRA]モジュラーリギングシステム「miRA(ミラ)」

2017年05月08日 06:32

久しぶりのCGトピックスです。

miRAについて
開発のきっかけですが、CG業界でスタンダードになりつつあるプログラミング言語「パイソン」を勉強するため、数年前から題材として「リグシステム」を趣味で書き始めました。結果面白くなってしまいC++にも手を出してしまいましたが・・・
(元々別の名前で開発していたのですが、コアの設計に問題があったため一度全て捨てて書き直したという経緯があったりします。)

もう一つの開発理由として、いわゆるハイエンド系のCG用に設計されたリグはアニメ業界での運用にマッチする部分もあればそうでない部分もあると長年感じていました。
そういった部分も含め、何か一つ自分なりの回答となりうるリグを作りたいというのが最も大きな開発理由だと思います。

細かい話は置いておき、とりあえずデモリールをご覧ください。
(※HD720でアップしていますので、可能であれば画質を上げてご覧ください。)

なお、リグのサンプル用としてモデリングしたのは響けユーフォニアムから麗奈さんです。ファンアート兼ねて作ってみました。
reina.jpg


■モジュラーリギングについて
モジュラーリギングは兼ねてより提唱されている、腕や背骨や手といった部位をバラバラにセットアップし、それを組み合わせて複雑なリグ構築を可能にするという考え方です。
概念としては、英語ですがこちらのスライドで分かりやすく説明してあります。
http://halo.bungie.net/inside/publications.aspx
Modular Procedural Rigging

最近では、スクウェアエニックスの佐々木さんが「CRAFT」という素晴らしいモジュラーリグシステムの情報をCESECで発表されていたり、海外では「mGear」というオープンソースのリグシステムが公開されていたりと、勉強する上での情報はだんだん出てきたなという印象です。

DFtalkさんでも、よい情報をたくさんまとめてくださっています。
https://dftalk.jp/?p=17463


■リグの軽量化
上記CRAFT開発者佐々木さんが以前のCEDECで発表されていた内容がすごく参考になりました。
http://cedec.cesa.or.jp/2014/session/VA/971.html
ここで発表された「ローカルコンストレイン計算」をモジュール内では基本とし、可能な限りワールドでの計算を行わないようにマトリックス接続を最適化しています。
そのためサンプルのように大量のリグを構成しても、現実的な速度でリグが動きます。


■Module(モジュール)とUnit(ユニット)
miRAの特徴として、リグが大きく分けて「モジュール」「ユニット」の2つにカテゴライズされます。
--モジュールの例--
・root
どのリグにも必ず作られる基礎モジュールです。
WorldリグとLocalリグ、セッティングノード(表示非表示やリグのステータスを変更するための歯車のようなリグ)が最低一つづつ作られます。
WorldとLocalはそれぞれ9個までオフセットを増やせます。

・chain
尻尾や背骨など汎用的に使えるリグ。
たとえば、背骨は4本。肩や頭、首は1本で作成する等することで色々と使いまわしています。
(本数はカスタマイズ可能)
IKスプラインハンドルなどアドバンスドビルドも可能。
スカートやヘア、顎やベロ。視線などもこれで作成している非常に汎用性の高いモジュールです。

・limb
腕や脚に使う、いわゆる2ボーンIKを基礎としたリグです。
3本モードといういう特殊モードも用意していますが、こちらは指などに使っています。


--ユニットの例--
・parentSwitch
IKハンドルや色々なリグの親を切り替えられるスイッチを作成します。
移動のみ、回転のみなどのカスタマイズも可能。

・adjustInfluence
肘の突き出しや脇下の補助骨など、コントローラを持たない補助インフルエンスを作成するためのユニット。
フラグがたくさんあり、自分でドリブンキーを組むためのシンプルなものからパラメータで複雑な動きを作れるものまで色々と作れるようにしています。

・physicalChain
チェーンと書いていますが、limbや他エンドジョイントが存在するリグなら全てに実装できるダイナミクス。
詳しくは後述

・meshAttach
ボタンやリベット、ジッパーなど変形するものの表面に変形しない硬いものを追随させる際に使います。
フェイシャルリグのセレクタなど顔のメッシュに追随させたい場合にも使います。
--------------------

モジュールは上記+いくつか専門的なものが数個ある程度ですが、ユニットは他にもかなりたくさんあります。

なぜモジュールとユニットをカテゴライズしたかを家の建設に例えてみます。
家を建てるには、まず柱を立てて壁を塗り、天井を塞いだりと「家としての基礎」を最初に作ります。これがモジュール。
その後、カーテンをつけたり冷蔵庫やテレビを置いたりと、実用に向けてのカスタマイズを組み合わせて運用していきます。これがユニット。

なぜこのようにカテゴライズしたかというと、一つ一つの機能をシンプルにすることによって汎用性を高めようという狙いがあったからです。
例えば、ダイナミクスを実装するための機能をチェーン専用ではなくユニット化することで、指や背骨、首などにもダイナミクスを実装できるようになります(やらないと思いますが・・・)
他にも、adjustInfluenceをチェーンモジュールとlimbモジュールにまたがって構成できたりとモジュール内のオプション機能にしてしまわずに独立させることで汎用性がぐっと上がり、さらに組み合わせた際の多様性が非常に広がります
(最初に紹介したデモリールのサンプルキャラクタに使っているモジュールは、セカンダリやフェイシャルを含めてもたったの5種類。多様性を出すためいかにunitとの組み合わせが重要かが理解できるかと思います。)

■GUIベースとスクリプトベース
モデラーやアニメータでも簡単にセットアップができるという敷居の低さを目標として開発しているのがmiRAです。
スクリプトの知識がなくとも、GUIからモジュールやユニットの作成。ビルドデータやウエイトデータ等の書き出し、リグの再構築などプロダクションパイプラインに必要とされる物を満たせるように設計しています。
(例)chainモジュール作成GUI中、スプラインIKのオプション
ik_201705080652594cd.jpg


ただし、GUIから作成可能とはいえ例えばスカートなど、繰り返し処理でモジュールを作った方が便利な場合があります。
そういった場合には全てスクリプトからのアクセスも可能としています。
さらにそのスクリプトを所定のテンプレートフォルダに配置すれば、GUI上から読み込みと再構築を実行できるようにしてあります。
(例)表情リグ関連のテンプレート
template.jpg


例えば、標準的なbiped(二足歩行)リグを作る場合以下のモジュールを使用して作成します。
-----
・背骨:chain
・首:chain
・頭:chain
・鎖骨:chain
・腕:limb
・手首:chain
・手の甲:chain
・指:limb
・腰:chain
・脚:limb
・足:step(リバースフット用モジュール)
-----
上記のような構成をイチイチGUI上から一個一個作っていると非常にめんどうですので、テンプレートスクリプトを記述して登録しあとはGUI上からボタン一個でbipedとして構成できるようにしてあります。

■その上で・・・
ここまで紹介したお話は「シンプルな機能の組み合わせで多様性を出していく」というモジュラーリギングのロジックをmiRAなりに解釈した内容です。

その上で、どのようなリグを設計するか。アニメータが何を求め、案件ごとにどのようなリグを提供していくか。
会社やチームによって、リグに求められる要素は想像以上に違います。
(例えばmiRAの売りとして、ほぼ全関節をトランスレート、ローテート、スケール、ローテートオーダーをkeyable開放しています。
これは会社によってはロックしろと嫌われることもあったりします。)

そういった状況の中でイチイチ機能をプログラミングしなくても、既存のモジュールやユニットの組み合わせで要望に対応していく事のできる仕組みを、今後も時間をかけて作って行ければと考えています。

プリキュアに叶えてもらった夢

2015年10月25日 21:55

(※「ながいよ!」という方は、スクロールして「子供たちの笑顔が~」から下だけでも読んでいただければと)


ついに10月31日公開になります
「映画Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!」
あちこちでセミナーや取材・告知をさせていただき、感謝しております。

イラスト描いてみまいた(クリックで拡大)
preMovKinen_201510252308545cc.jpg



この中で、フル3DCGによる中編映画
「プリキュアとレフィのワンダーナイト!」
で、映画としては初の監督をやらせていただきました。
半年という短いプロダクション期間でフルCG映画を作るという無謀な挑戦でしたが、なんとか先日ダビング、オンラインを経て納品となりました。

今までもたくさんのプリキュア作品に関わらせていただいてきましたが、今回は初監督ということもあり自分にとって並々ならない気合と執念で作品制作に望みました。
なんだか自伝のようになってしまいちょっと長いですが、自分がプリキュアというタイトルに込める思いを書いていければと思います。


■「監督になりたい!」と決意した「ホッタラケの島」
私のキャリアスタートはゲーム会社で、当時「一流のモデラーになる」事が唯一の目標であり、夢でした。
しかし、最初の転職先であるプロダクションIGで関わった映画「ホッタラケの島」で、当時絵コンテ演出をされていた塩谷直義さんの仕事をみて「キャラクタを魅力的に見せるのはモデリングだけじゃない」という当たり前の事に気付きました。
キャラクタのしぐさやセリフ、場面の流れなどあらゆる要素が総合的に絡み合い、キャラクタは魅力的に見えるのだと。
それ以来私は6年間「監督になりたい!」と言い続けるようになりました。


■東映に来るきっかけとなった「プリキュアオールスターズDX2」
そもそも私は東映アニメーションに所属前、別の仕事をしながら在宅で東映の仕事を手伝っていました。
その時手伝っていたのが大塚隆史さん監督の「映画 プリキュアオールスターズDX2」で、宮原直樹さんがディレクターをされていたフル3DCGエンディングのキャラモデリングを手伝わせてもらっていました。
私の担当はプリキュア5GOGOの「キュアレモネード」だったのですが、リアル系のCGしか経験のない私はOKすらとることができず引き上げられてしまう始末。迷惑だけかけて全く戦力にならないというありさまでした。
ただ、引き上げられたにも関わらず試写会で見たキャラクタたちの映像をみて「もう一度この仕事をしたい」と思えるくらいインパクトのあるエンディングに仕上がっていました。

ちょうどその頃別の仕事が止まる事が決まり、現在は東映デジタル部の部長になっている氷見さんに声をかけてもらいました。
私としては結果を出せなかった後ろめたさがあったのですが、それでも「才能を感じるから」と声をかけてくれた事に感激し、デジタル部に直接所属する事を決めました。


■リベンジで挑んだ「スイートプリキュア」
それから5年半、色々な作品に関わってきたのですが、転機となったのは2011年「スイートプリキュア」の後期エンディング。4人目の新キャラクタ「ミューズ」のモデリング担当が空いているが、やってみるかと提案をもらいました。
DX2での挫折がくやしくて、いわゆる「セルルック」のキャラクタ表現に対して徹底的に自主勉をしていた私は「やらせてください!」と即答。今回は引き上げられず最後までOKを取る事ができました。


■人生初の成功体験「スマイルプリキュア」
スイートで一応はトゥーン系案件でも使えると評価してもらい、次のスマイルプリキュアではリードモデラーをやってみろというお話をいただくことに。
話を聞くと、スマイルの監督は私が東映に来るきっかけを作ってくれたDX2の大塚さん。上がってきたキャラクタデザインはとても好みで、
とにかく「この作品に運命を感じる」と思いました。
それもあり猛烈な熱意で直談判をし、リードモデラーではなくエンディングのディレクターとしてやらせてもらえることになりました。
そうと決まればがんばりましたよ、そりゃもうがむしゃらに。
結果的にスマイルプリキュアのEDはとても好評をいただき、プリキュア初のCGWORLD表紙をやらせてもらうなど大成功を収めることができました。
CGWORLD (シージーワールド) 2012年 06月号 vol.166
CGWORLD (シージーワールド) 2012年 06月号 vol.166
ワークスコーポレーション 2012-05-10
売り上げランキング :


Amazonで詳しく見る
by G-Tools



■逃げては通れぬ戦い「聖闘士星矢 Legend of Sanctuary 」
スイートやスマイルをやりながらもずっと取り組み続けていたビックプロジェクト星矢がついに始動し、しばらくはこれにかかりきりになっていました。
この案件ではキャラクタデザインという肩書きを頂くことができました。
正直、長い案件だっただけに辛い思い出がそれなりにあります。
とにかく、苦しかった。(忙しかったとは別)


■リハビリだと思ったら超絶大変だった「ハピネスチャージプリキュア!」
星矢のデザイン、モデリングが終ったタイミングでしばらくゆっくりしたいなあ・・・と思っていたら、上司から呼び出されました
「3つの中から好きな案件選んでいいからディレクターして」
というお話。
今思えばこれ以外選ばないだろと思うラインナップだった気がしないでもないですが、とにかく私が選んだのは「ハピネスチャージプリキュア!」でした。エンディングは一回やっているし、まあ肩の力を抜いて息抜きがてら楽しもうくらいに思って引き受けました。
世の中そんなに甘くない!
ハピネスチャージの前期をやっている時期は、星矢のショット制作まっさかりの時期。
コンポジターもエフェクターも協力を得られず、あらゆる作業をセルフサービスでこなす超絶過酷な案件に。
でも、不思議と苦しくは無かった。むしろむちゃくちゃ楽しかったのを覚えています。
その後フォームチェンジバンクを数本作りながらクオリティの土台を固めて、グランドラインへ旅立つことに。


■東映を辞めようか本気で悩んでいた時期
実はワンピースが本格始動する前、東映を退社しようか本気で悩んでいました。
正直ここまでの数年間で精神的に疲弊することがあまりにも多く、ハピネスが楽しかったので少し持ち直したものの気持ちの落ち込みは治っていませんでした。
この時期、自分は監督になれてもショートムービー止まり。テレビや映画で監督なんてどうせなれないだろうと思ってしまっていました。
そんな時、スイートプリキュアの境監督と星矢の上村助監督が飲みに誘ってくださいました。
お二人は監督を目指す私からすると憧れの中の憧れ。
そこでお二人がが出会ってきたレジェンドな方々の話や、やりがいのあった仕事の話。
たくさんの話を聞かせてもらいました。
そこで何より嬉しかったのは「宮本君の監督した作品を見てみたい」と二人に言ってもらえたこと。
とにかく、体がぞわっとするくらいうれしかったのを覚えています。


■初監督「東京ワンピースタワー」
実は今の映画を監督する前に、一本だけショートムービーの監督をやらせてもらいました。
現在東京タワーの下でやっているワンピース専属のテーマパーク「東京ワンピースタワー」の映像です。
「ルフィのエンドレスアドベンチャー」というアトラクションの最後にあるシアターに流れている映像が私の初監督作品です。
ここでも、キックオフ時にある憧れの方からうれしい言葉をいただき、一気に気持ちがトップギアに入りました。
前からワンピースはやってみたかったこともあり、その当時できることは全てやりつくし今でもクオリティには自信を持ってオススメできると自負しています。
ご興味の有る方は是非東京タワーへ。


■ついに映画監督「プリキュアとレフィのワンダーナイト!」
ここ数年間の人生で最も気持ちの落ち込む時期を乗り越え、ようやく手にしたチャンスが今回の映画。
私を東映に呼んでくれた氷見さんから「ハロウィンモノやりたいって言ってたよね、今年はハロウィンがテーマだから企画出してみる?」と進められました。
「ここを逃したら次のチャンスは無い!」と思い、必死に食らいついて企画を前に進められるよう頑張りました。

中編とはいえ半年でフルCG映画を作るというクレイジーなスケジュール。
正直最後の最後まで本当に終るのかと不安でした。

今回は監督のほかに、キャラクタデザイン、絵コンテ、リードモデラー、フェイシャルリギング、アニメーションなどを兼任しました。
自分に出来る事はなんでもやるぜ!というスタンス。
メインスタッフには今までずっと一緒に組んできた信頼できる布陣で固めてもらい、彼らと一枚岩になり結束できなければこの期間で完成はありえなかったと思います。
とにかく必死に力を尽くしてくれたスタッフたちにはもう足を向けて寝れません。

実は制作中盤、同時作業していたテレビの後期EDの佳境時期くらいからずっと頭痛が治まりませんでした。
症状を調べてみたら「緊張性頭痛」というものらしく、緊張やストレス、肩こりから来るものだとか。
結局映画が終るまで強弱はともかく、ずっとついてまわっていました。
ただ、オンラインで全素材を納品した日の夜信じられないくらいぐっすり眠れて、次の日起きたら完全に頭痛が治っていました。
私は昔から緊張はしないタチだと思っていたのですが、今回ばかりは不安でどうしようもなくなっていたのかもしれません。


■子供たちの笑顔が、一番のご褒美
そして昨日10月24日、私にとって晴れ舞台となる東京国際映画祭のレッドカーペットイベント・新宿バルト9の舞台挨拶をしてきました。
これらは自分にとっては身に余るもので、完全に身の丈にあっていないレベルのイベント。
プリキュアというビックタイトルにぶら下がり「連れて来てもらった」イベントです。
いつか自分の実力が、この舞台に相応しいレベルに到達できる日が来るんだろうか・・・
そんな事を思いながらフローラさんときゃっきゃしてきました。
CSD1gdhVAAMk637.jpg

そして今日10月25日。ついに子供たちの反応を見る日がやってきました。
試写会で後ろの方に座り、隣に座った長編の座古監督と二人で子供たちの反応を見ることに。
もうね、本当に一生懸命、プリキュアたちを応援してくれるんです。
一生懸命ライトを振って「プリキュア、頑張れ!プリキュア、頑張れ!」って。

本編もさることながらその姿を見て感動し、気が付いたら涙を流していました。
4年前始めて子供たちの反応を見たときから確信していたこの思い。
「子供たちにとって、プリキュアは架空の存在じゃない」
実在のヒーローだからこそ、そこに適当な事はできない。
改めて、自分の仕事の大切さを実感しました。
そして、うれしかった。
心の底からうれしかった。
子供たちのために映画を作ってきたはずなのに、何で俺が一番うれしさをもらってるんだって、もう胸がいっぱいになりました。


■「レフィ」というキャラクタについて
最後に、映画について触れようと思います。
ネタバレにならない程度に、映画オリジナルキャラクタ「レフィ」についてお話します。
ここまで、私が映画監督になるまでのお話をしてきました。その中で

・監督になりたいが、そう簡単ではなかったこと
・何度も挫折し、心が折れ、諦めてしまったこと
・それでも他人の言葉や熱意に心を打たれ、もう一度頑張ろうと思えたこと


プロットを書いている時は全く意識していませんでしたが、レフィというキャラクタは私が「監督」になるまでに経験してきたこと、出会ってきた人たちの生き写しだなという事に気付きました。
劇中でレフィが言うセリフ、プリキュア達に言ってもらったセリフ。
それら全てに、自分がもう一度頑張ろうと思えた大切な人たちとの関わりが散りばめられています。


人間、一度あきらめた事を何かのきっかけでもう一度挑戦し、達成したとき本当に心に勇気が湧くんです。
私は私が出会ってきたたくさんの人たちのおかげで、もう一度頑張ろうと思えました。
この映画を見た子供たちが、本当に小さなことでもいいんです。
「レフィみたいにもう一度頑張ろう」
そう思ってくれたら、これから先生きていく人生の中で、それが勇気になり柱となると思うからです。

カナタ王子の言葉で夢を捨てずにいられた、プリンセスはるかのように。


最新記事